【渡辺顕一郎】男子草食化、女子肉食化のススメ

【渡辺顕一郎】男子草食化、女子肉食化のススメ(2011/5/15)

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 最後に、私が出会った障害児の家族のエピソードを紹介します。四歳の娘さんには重度の障害があって、自分の力では身動きが取れません。食事、入浴、排泄など、生活の全般にわたって介護が必要でした。その介護を担っていたのが、二十代半ばの若い母親でした。

 私がお目にかかったとき、母親はにこにこ微笑んで子どものオムツを替えていました。介護の負担に押しつぶされそうになる女性をたくさん見てきた私は、どうしても彼女に確かめてみたくなりました。

 「お母さん、どうしたらそんなに素敵な笑顔でいられるのでしょう」

 彼女は少しばかり照れながら教えてくれました。

 「僕たちの子どもだから、二人で一緒に育てていこうって、夫が言ってくれたから」

 夫が思い切って仕事を辞めたこと、夕方六時には帰宅できる仕事に転職したこと、娘を毎晩風呂に入れて食事の介護も手伝ってくれること、何よりも娘を心からかわいがってくれること。のろけ話をたくさん伺いました。

 「おかげで夫の収入は減ったけど、これでいいんです。その分、私も頑張りますから。まずは生活費を切り詰めること……」

 そう言って彼女はまた笑いました。柔らかい笑顔に触れて、私まで幸福な気持ちになりました。