【角川いつか】成功する男はみな、非情である。
【角川いつか】成功する男はみな、非情である。(2007/12/15)
■p28
「何があってもにこにことしていること、腰を低くすること、ていねいにものを扱うこと……」(岩崎峰子/花柳界)
これは客商売に限ったことではない。
成功する人間は深々と頭を下げる。
私がかつて、トップの人間と商談の場に臨んだときのことである。先方のクライアントは大企業の重役。権威を笠に着て偉そうにしている。
正直言って小物!
そのトップの人間も、私がいない場所では、その重役を”古狸”なんて呼んでいる。でも、その日商談が終わると、トップは社の出口まで”古狸”を見送りにいく。そして「ありがとうございました」と、深々とお辞儀をした。
びっくりした。
角度は90度! いわゆる”最敬礼”よりも、もっと角度は深い。
この人が、こんなふうに挨拶をするなんて……。
でも、もっとびっくりしたのは、その先である。”古狸”の姿が見えなくなるや――。
「やれやれ、やっと帰ったか。あいつあもうダメだな」
そう言って、すぐ手を洗いに行った。何度も何度も手を洗う。まるで汚染物質か何かに触れてしまったかのように。徹底的に相手の痕跡を体から消去しなければ気がすまない……。そんな感じ。
■p29
イギリスのジェントルマンの子供の話。
ジェントルマンといえば、レディファーストでしょ。小学校でたとえば、女の子が重い荷物を持っているのを男の子が手伝わなかったとする。すぐ「グラウンド10周!」なんて罰が与えられる。
女の子に優しくなれ、というモラルの教育ではない。徹底的にジェントルマンとしてのマナーを身につけろということ。
心の中では何を考えていてもいい、ただ「強者の外見」を徹底的に磨いておけ、ということなのだ。
私が知っている世界的な成功者は決まって礼儀正しく、頭を下げることをいとわない。
松下幸之助さんは、相手が見えなくなるまで、いつまでも手を振っていたとのこと。本田宗一郎さんも部下に対して土下座して謝ったことがある。
しかし、心の中では何を考えていたかわからない。だから、怖い。
そう、礼儀正しい人というのは、ホントはとても怖い人間なのだ!
■p155
人間は狭苦しいところに押し込まれると、人の噂をしたり、イジめたりするようになる(動物だってそうかもしれないけれど)。
内勤のOLが噂好きなのも、彼女たちが仕事で外に出ることがあまりなく、異動もないから。半径5メートル以内のことしか興味ないのだ。
いつも同じクラスで行動する中学まではイジメが横行していても、ひとりひとりがバラバラのクラスに
出席する大学ではイジメの話はあまり聞かないのも、この法則による。
噂好き、イジメ好きの人間は、狭苦しいところに閉じ込められた哀れな人であって、自分に自信もないから、他人に矛先を向けて自分が標的にならないように防御しているだけ。ただそれだけのことです。